楽さんのエンタメ語り<映画編> エール!

エール! 制作年: 2014  製作国:フランス  上映時間:105分 

監督 : エリック・ラルティゴ

<あらすじ>

フランスの田舎町。農家を営むベリエ家は、高校生の長女ポーラ以外、父も母も弟も聴覚障害者。ミスコンで優勝したこともある美しい母、口(手話)は悪いが熱血漢な父とゲーム好きの弟。オープンで明るく、仲のいい家族だ。ある日、ポーラの歌声を聴いた音楽教師トマソンはその才能を見出し、彼女にパリの音楽学校のオーディションを受けることを勧める。夢に胸をふくらませるポーラだったが、彼女の歌声を聴くことができない家族は、彼女の才能を信じることもできず、もちろん大反対。一家の「通訳」でもあるポーラは悩んだ末に、夢をあきらめる決意をする。しかしその歌声が、耳の聴こえない家族に届く出来事が起こる―

<語り>

家族の耳となり口となっている長女が、それを与えられた役割のように当たり前の事として受け入れて過ごしている姿。長女への依存が家族のバランスを保っているという両親の思い込み。姉を応援したいが姉の代わりができないと不安を抱える弟。それぞれが苦悩を抱えながらも普段の家族の行動は前向きで、健常者に卑下することなど微塵もなく、フランスらしいチクっとしたブラックユーモアがたっぷり含まれていて笑いを誘います。また、聴覚のハンディキャップを補って余りある、表情の豊かさ、手話と身振りをフル活用したコミュニケーションが、言葉の何倍も饒舌に感情を伝えてくるのが興味深いです。そうやって、ぶつかり合いながらも決して妥協せず、互いを理解しようと一生懸命な家族の姿は、やはり感動的で胸を打たれます。

そして誰もが笑顔になれるクライマックス。もう最高なんです。そこに明るい未来があるとイメージして、変化を受け入れることができたら、きっと誰もが幸せになれる。そんな温く力強いメッセージを受け取ることができる作品です。

ちなみに少し前に公開された『コーダ あいのうた』は、本作のアメリカ版リメイクで、米国アカデミー賞にもノミネートされていて話題です。

<予告編>※『エール!』は、Amazonプライムで観ることができます(2022年3月現在)。